#3 OWLEF

OWLEF(オウレフ):
アメコミを思わせるタッチに独特の色彩感覚を乗せて描かれたオリジナルコミック『OWLEF COMIC』シリーズの作者 。Instagramで公開していた各ページを全ページカラー印刷にしてリリース。コミック制作の他にもライブペイント、イラスト制作、ダンサーとしても活動している。東京造形大学映画学科卒業。1994年3月29日生まれ。埼玉県本庄市出身。Instagram→ 

a profile photo by A ON FLEAK

DIGGIN’ LIFE!!!『OWLEF COMIC』

やりたいことは、掘った先に。
この世界には色々な人がいるから、当然人によってやりたいことも様々。それは例えばダンスだったり絵を描くことだったりコミックを出したり。”自分のやりたいことをやる欲”に忠実なOWLEFが人生のテーマとして掲げているのが”DIGGIN` LIFE”で(Dig=”掘る”/ヒップホップスラングで”探しあてる”)、「人それぞれにやりたいことがあるはずだから周りの目なんか気にせずそれを掘っていこう」という思いから生まれた形の一つが『OWLEF COMIC』だ。かねてより漫画を作りたかったOWLEFが2020年にリリースしたOWLEF COMICは先日Vol.2をリリース。これまで制作の一端を担っていたマテリアルにはどんなストーリーがあるのか。

Materials

▲一般的な紙と比べて滑らかな描き心地でインクが滲みにくいのでストレスなく描くことができる。表面が傷みにくいのも特徴のひとつ。『マクソン 漫画原稿用紙 B4』(ホルベイン)

「完成形と同じサイズ感で」
「元々大きいキャンバスに1枚絵を描くのが好きだったので漫画を描く時も大きいサイズの方が良いと思っていて。B4サイズなら描きやすいし、B4で印刷すればそのままの温度感が出せます。普通の漫画のサイズより大きければ手にしてもらえた後も埋もれないかなとも思っています。フレームがバラバラなので一つの作品で使用する用紙は統一するようにしてますが今後他のメーカーの漫画原稿用紙も色々試すと思います」

▲日本の伝統色えび茶色×高級感のあるワインレッドの軸色でお馴染み。世界最高の滑らかさを持つただ一つの描き心地として「unique」から名付けられた。『uni』(三菱鉛筆)

下書きは大作の下ごしらえ。
千里の道も一歩から。力強いタッチもセクシーな曲線美も、まずは下書きから。「鉛筆はやっぱりuniですね。美術学校に通っている時に色々試したんですけどこれに落ち着きました。滑らかな描き心地のuniが一番良かったですね」。何気なく選びがちなツールも絵描きには相応の理由と思い入れがあるんです。

▲滑らかで滲まない顔料を使用したゲルインクボールペン。0.28mmから1.0mmまでのボール径を持ち、カラーバリエーションも最大全31色と豊富。太さは奥から1.0mm、0.5mm、0.28mm。0.28mmにはめているのは0.5mmペンの蓋だった。『ユニボールシグノ』(三菱鉛筆)

「お気に入り中のお気に入りです」
OWLEF COMICは主に3種類の太さのペンを使い分けて生み出される。「これが一番描きやすいですね。何を描くにしても」。通常は黒の筆ペンを使用する”ベタ塗り”でもこのペンを使うことがあるほどの溺愛っぷり。「ペンの蓋なんかは無くしちゃったりして、その時ある蓋をとりあえずはめてたりしますね。ライターみたいにすぐ無くしちゃうんです」

▲太くも細くも描ける油性マーカーの定番。描き先を選ばない速乾性と耐水性で制作現場に欠かせない一本。『ハイマッキー』(ゼブラ)

中でも外でも頼もしい相棒。
OWLEFの活躍はコミックに留まらず、ライブペイントをしてその場で描き上げることも。そんな時に活躍するのが言わずと知れたゴツいアイツ。「ライブペイントでは絵の具でやると形が出にくいからマッキーを使いますね。ポスカもよく使います。OWLEF COMICではベタ塗りでも使えて用途が幅広いので重宝してます」

▲JR京浜東北線 蕨駅から徒歩3分。ドレッドヘアやツイストパーマなど特殊ヘアを手掛けるサロン。画像はOWLEFがデザインした店主の小野氏の美容師歴30周年を記念したロゴ。店頭では当ロゴの入ったTシャツも販売中。サロンフリーダム(〒333-0851 埼玉県川口市芝新町8-30新町ビル2階 ☎︎048-212-0643)

「感覚の扉を開いてくれた人なんです」
OWLEF COMICに登場するキャラクターにはドレッドヘアが多い。それもそのはず本人の特徴といったらまず目につくのがドレッドヘアなのだ。そんな彼のヘアスタイルを8年にもわたってメンテナンスするのがサロンフリーダムである。「店主の小野さんは右脳から言葉を発するような人なので会ってすぐに喰らいましたね。21歳くらいの頃からずっと通ってますが、その頃からずっとアートの話とか教えてくれました。すごく手先が器用な人なんです」

▲Painter / 日本ノ黒線。ストリートカルチャーを主軸とし、日本古来の伝統・風土・原風景に日々影響を受け、表現し続ける。和製サイケデリックでありながら日本人が持つ優美繊細な感覚を黒線(くろせん)と称された独自の流線模様で万物を描き出す。SOLID BLACKLINE

「一緒に絵を学び、絵の世界サバイブする友」
幼少期から絵を描くことが好きだったOWLEFは、高校時代に通った美術予備校で一生涯の仲間と出会った。「SOLIDとは別々の大学に通うことになったんですけど、今でも会った時には2人で絵を描きますね。絵で会話するじゃないですけど、普通の人が『おー! 元気?』って聞くような自然な感じで、1枚の紙に絵を描きます。そういう仲間がいるのって良いですよね」

▲東京都出身、ダンサーであり楽曲制作・提供やDJ、アートワーク等出力の方法に囚われず国内外で活動する。又、出身地である東京・西荻窪にて新感覚アートスペース”宇宙空間クリエイティブスペース浮遊所(FUSION)をプロデュース。地域の活性化に尽力を注いでいる。ttr (ティーティーアール)

自由なアウトプットの裏には強烈なインプット。
コミックのストーリーやコマ割りを考えるには日頃のインプットが欠かせない。絵描きだけでなくダンサーとしての一面も併せ持つOWLEFにはダンス仲間もいる。「TETSUさん(※ttr)とは大学時代のインカレで知り合って一緒にヒップホップを踊ったりしていました。OWLEF COMICはもちろん色んな影響を受けていますが、その中の一つにダンスがあります。TETSUさんとは今でもたまに一緒に踊ったりしてるんですけど、最近はTETSUさんが上手くなりすぎて少し踊りづらくなっちゃいました笑」

▲1990年からイラストレーターとして活躍している覆面画家、ミュージシャン。圧倒的な画力とやけにセクシーで挑発的な女性の絵を得意とし、ジャケットやフライヤー制作だけでなく様々なシーンでCOOLな絵を提供し続けている。『The Birth of Rockin’ Jelly Bean』(ワニマガジン社)/Rockin’ Jelly Bean

「とにかく女体がヤバいです」
OWLEF COMICの中にしばしば登場する女性キャラクターはどれも魅力的。ぷっくりした唇にグラマラスなボディラインは読者を惹きつけて目を釘付けにする。OWLEFの学生時代に遡るとそんな彼女達の原型に出会うことができる。「小学生か中学生の時にロッキンジェリービーンの絵が書いてある筆箱を使ってたんです。めっちゃカッコ良くて好きでした。エロくて可愛いしタッチが天才的ですよね。ちなみに最近描いた女の子では、知り合いにアリアナ・グランデが好きな人が居たのでそれを意識して描いたりもしましたね」

▲近年ではスーパーヒーローものに代表されるアメリカンコミックス(アメリカの漫画作品の総称)。19世紀後半からアメリカで起こったコミックブームだが刊行年代によってバックボーンが大きく異なるのでマニアの間では年代によって好みが分かれることも。

目指したのは大好きなあの時代の、あのタッチ。
「90年代以前のアメコミのレトロな感じのタッチが好きです。アメコミが全ページフルカラーなのでOWLEF COMICもアメコミみたいに色をつけてます。中野のまんだらけとかで安く売ってるのでそこで気軽に買って、適当にテーブルの上に置いたり壁に貼ったりしてますね。描き方が映像っぽくて日本の漫画と違って斬新さがあって好きです。日本の漫画ももちろん好きなので両方を参考にしてるんですけどね」

▲G.I.ジョーのフィギュア。背中のリュックにはテントが入っていたりカバンには飯盒セットが付いていたりと細かい作り込みになっている。「購入する時は地元の店やふらっと行った店で手頃な値段で販売されているものを安く買うのが好きです。出会いみたいなもんですね。」

「子供心くすぐるギミックは真似したくなります」
OWLEFの自宅を賑やかすのは数多くのフィギュアだ。「フィギュアは子供の頃から好きだったんですけど、5年くらい前にLAに行った時に日本より安く売られているのに衝撃を受けてたくさん買ったのを機に興味が再燃しましたね。漫画を描く時のポーズ参考にすることがあるんですけど、単純にデザインもデフォルメされてるものもあって好きですし、作り込みが細かいのがまた良い。こういう作り込みの細かさも自分の漫画で意識して描く時があります」

▲貼られているステッカーはOWLEFが日頃お世話になっている先輩でラッパーのIMUHABLACK。「IMUHA BLACKさんの曲を聴くと気合が入ります。」IMUHABLACK/iPad(Apple)

ペイントのしやすさはデジタルツールならでは。
数々のアメコミがそうであるように、漫画に色がつくと奥行きが生まれる。OWLEF COMICのフルカラーはiPadで彩色されている。「以前は原稿に直接色を塗っていたんですけど出版社に持っていった時にそのまま原稿が帰ってこなかったことがあったんです。それ以来原稿は紙にペンで描いて、彩色はデジタルでやることにしました」

One Way Left

“DIGGIN’ LIFE”をテーマに掲げているOWLEFがコミック制作を始めることになった経緯を掘る前に、まずは自身の名前について聞いてみた。

「OWLEFという名前は”One Way Left”という言葉の頭の文字を取っているんです。”この道しかない”という意味ですが、決してネガティブな意味ではなくて。

昔から一つのことを続けて極めていくような職人に憧れがありました。だって一つの事を続けるのって凄くカッコいいじゃないですか。だから自分も、一つのことを極めるという意味を込めて”OWLEF”と名乗っています。

名乗り始めたのはたしか2014年くらい。まだ大学在学中でしたね。”DIGGIN’ LIFE”が人生に掲げるテーマですが”One Way Leftは”自分の生き方という感じです。一生絵を描き続けていきます。」

まずは自分で作ってみる。やってみる。

醍醐(以下、D):コミックを出すきっかけになったのはどのようなタイミングだったんですか?

OWLEF(以下、O):もちろん一番は”やってみたかった”ということからですね。イラストを描いている人とかはいるけど、自分で漫画描いて印刷してる人がいないなと思ったのもあります。それは労力の部分があると思うんですけど。

あと以前、なかなか絵に集中できず今ほど描けていない時期があったんです。そこに対して周りの人から馬鹿にされるようなことは別に無かったんですけど、自分の中で周りの人を見返してやりたいみたいな気持ちがあったんです。

D:なるほど。マテリアル#11のiPadの際に聞きましたけど、出版社に持って行ったこともあるんですよね?

O:OWLEF COMIC vol.1の時に少年誌を扱ってる出版社に持っていきましたね。その時は正直あまり相手にしてもらえませんでした。それがかなり悔しくて、それも「もっとやってやる!」って思ったきっかけの一つになりました。

作品が紡ぐ人間関係。

D:実際にコミックを作ってみてどうでしたか?

O:やっぱり大変ですけど、それよりも楽しいですね。

人との繋がりも増えましたね。西荻窪にあるTETSUさんの浮遊所と、高円寺にあるINCredible COFFEEとSPOTMANにもOWLEF COMICを置かせてもらってます。

D:INCredible COFFEEとSPOTMANは学生時代からの知り合いの方なんですか?

O:学生時代からではなくて、INCredible COFFEEの三浦さんとはクラブでたまたま知り合ったのがきっかけで。そこから仲良くなって今度高円寺にコーヒーショップを開くんだって聞いてたんですけど、そこで通うようになって置かせてもらうようになりました。コミック以外にも絵を置かせてもらったりしてます。

そしてSPOTMANのシンタロー君とは三浦さんを介して知り合いました。元々お二人が仲良かったみたいで、そこの集まりに参加させてもらうようになって一緒にキャンプ行ったりするくらい仲良くなりましたね。

D:ちなみにvol.1、vol.2と作ってみてからの変化などはありましたか?

O:実はvol.1の時に持ち込みをした出版社にvol.2も持って行きました。同じ担当者の方だったんですけど、前回より食いついてくれたというか、続けてることに対してかもしれませんが反応してくれましたね。またできたら持って行きたいですね。

OWLEF COMICのこれから

D:今後OWLEF COMICで考えていることとかあるんですか?

O:今コミックを読んでくれてるのって、やっぱり友達とか、友達の友達くらいだと思うんですよ。なのでもっと色んな人に読んでほしいなと思ってますね。自分の知らない人まで届けられたらなと思ってます。そのためにはもっと技術も向上していく必要があると思うし、次の作品をどんどん出していきたいですね。

D:ということはOWLEF COMIC vol.3も作成中なんですか?

O:はい。もうけっこう形になってきてます。ただペイントだったり製本化したりっていう作業がまだ残ってるので今年いっぱいはかかりそうですね。vol.3リリース後には海外にも行きたいし、そこでvol.4だったり他の作品とか、思う存分絵を描きたいとも思ってます。

編集後記

  • 人形と戯れるキュートなOWLEF

掘ることって、面白い。

僕は昔から何かと優柔不断で思い返せばいつもくだらないことで悩んでいました。そんな時に自分の中の羅針盤となったのは、興味あることをとりあえずやってみて、その行動から何を感じたかを考えることでした。OWLEFさんの言葉を借りれば、僕も僕なりに”DIGGIN’ LIFE”という生き方をしていたのかもしれません。

自分自身を掘った先に何があるかは分からないけどやってみないと分からないことだらけだから、何でもチャレンジしてみる。なんでも食べてみる。どこへでも行ってみる。

OWLEFさんは絵も描くしダンスもするしコミックも描く。周りの目なんか気にしない。そんな姿がカッコ良かったから今回インタビューを申し込んだけど、彼が真面目で芯が強い人間だということも話してみないと体感できなかった気がします。

そして自分の中にブレない軸を持っていると、仲間にも出会えるのかも。どこで出会えるか分からないけど、自分が踏み出した先に仲間はいるかもしれない。それまで、自分自身のDIGGIN’ LIFEを生きていたいです。

One Response

  1. ピンバック: #6 SOLID BLACKLINE

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